vol.35 秋の七草に思う事

我が家の周辺にある田んぼはほぼ稲刈りも終わり、黄金色だった田んぼの大海原も今は寂しげな茶色の景色。日中まだ暑い日が続きますが、こういった景色を見るとやはり秋を実感します。
さて、春の七草といえば「七草がゆ」を思い浮かべると思いますが、秋の七草は食すというよりは、夏から秋にかけて咲く、見て楽しむ美しい花たちです。どれも秋風に揺られる姿の美しい植物達ばかり。元は山上憶良が万葉集で詠んだものから来ているようです。
秋の七草を見に名所に出かけたり、お花のアレンジに取り入れて季節感を演出してもいいですね。

秋の七草に思う事

女郎花(おみなえし)・・・

すっと背の高い黄色の小さな小花をつけた姿は、秋の夕日に照らされると、より輝いて見えます。この植物はどちらか言えば、草原に群生している姿を遠くから眺めるのが個人的には好きです。

萩(はぎ)・・・

枝垂れるような枝ぶりと、紅紫色の小さな花が魅力の植物。この萩はヤマハギの事を言うようです。名所は各地にありますが、やはり寺社にある萩に風情を感じます。特に石積みや石階段の上から滝のように枝垂れ咲く姿は見事です。

桔梗(ききょう)・・・

桔梗と言って思い出すのが、京都にある天徳院。苔の中のあちこちに立ち上がる桔梗と美しい杉苔と景石が織りなす景色。これに勝る桔梗の庭はある?と思わせる庭園です。ただこの桔梗、秋の七草とは言え見頃は7月頃。その時期だけ一般公開しているので、興味のある人は来年是非見てみるとのお勧めします。

撫子(なでしこ)・・・

ここで言うのは楚々とした雰囲気の河原撫子。撫子の仲間はたくさんあり、カーネーションやセキチクもその仲間の一つ。セキチクは別名唐撫子(からなでしこ)と呼ばれ、中国原産の撫子に対して日本に原産の撫子を大和撫子(やまとなでしこ)と言ったようです。花弁の深い切れ込みが美しい花です。

尾花(すすき)・・・

すすきと言って思い浮かべるのは、箱根の仙石原。秋の日に照らされたすすきがまるで自らきらきら光っているような幻想的な景色に感動!今まですすきというと、そこらの草原に生えている根強い草のイメージが強かったのですが、この景色を見てススキの美しさを改めて実感しました。

葛(くず)・・・

幼少時代蒸し暑い夏も終わりに近づく頃、家の前のフェンスに絡みついた葛が甘いブドウのような香りを漂わせながら紫色の花を咲かせていたのを懐かしく思い出します。辺り一面を覆い被さるようものすごい勢いで繁殖し手が付けられなくなってしまう葛は、庭園には適さない植物と思っていましたが、数年前に訪れた高知県立牧野植物園で珍しい白花の葛が植えられ、美しい建築物の手すりに調和していたのをみて驚きました。

藤袴(ふじばかま)・・・

秋の七草の中で一番開花が遅いのが、この植物ではないでしょうか?学名はユーパトリューム。私がこの植物に興味を持ったのは、葉がブロンズカラーの、ユーパトリューム・チョコレートでした。他にも斑入り種や薄紫の花のものなど色々あります。今や野生で見る事は難しいこの植物。園芸品種よりもきっと儚げで華奢な姿なんだろうと想像します。

我が家の秋を感じる植物ベスト3

シソもバジルも同じシソ科の植物。秋の気配を感じると、花穂を出し始めます。同じ科という事もあって似たような花の姿をしています。でもやっぱり食べて美味しいのはシソの方。花が終わって実になる頃収穫して、肉味噌炒めにパラリと混ぜれば最高です!夏の間辛そうにしていたニラも、秋になるとすっと花穂を伸ばし始め、きれいな白い花を咲かせ始めます。あの匂いからは想像出来ない美しい姿です。この白い花、ハナムグリやキタテハなどの蝶がたくさんやって、虫たちにも人気のようです。カクトラノオとも呼ばれるこの花。秋になるときれいなピンク色の花を咲かせ始めます。この花、根付きの一株をご近所にいただいたのが我が家に来た最初。地下茎で伸びるので、あっというまに陣地を広げました。この花には必ずオオスカシバが蜜を吸いにやってきます。

秋の七草を改めて見てみると、秋風との関わりが深い様に思います。どれも風に揺られると葉をたなびかせたり、茎を揺らしたりするような植物たち。だとすると、個人的に是非この季節に大変美しいワレモコウを仲間に入れて欲しい!などと勝手に思ったりします。万葉集の時代とは随分と時代が違いますが、小林一茶はその句の中で「ワレモコウ、それでも花のつもりかな」と詠んでいます。やはり花の仲間には入れてもらえないのでしょうか?でもこの小さな深紅色の花姿、個人的には何とも美しいと思うのですが・・・。